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リハビリ記録その157

2015-12-6
山内正敏

 普通に雪の多い11月です。もっとも、ここ数年は雪が少ないこともありましたから、それからすると雪のやや多い11月かもしれません。

 発病14年ということで、ビデオを撮り、ホームページを更新しました。
 夏場の外での訓練(歩行器、松葉杖などの各種記録)はビデオに撮っていないので(代わりに先月紹介した写真などがある)、ビデオに収めているのはごく一部ですが、その中から進展の分かりやすいのを選ぶと以下の2つになります。

*プール内の階段での四つん這い屈伸 2013年は 両手が必要 2014年は 片手に挑戦 2015年は 片手で何回かできる

*階段を松葉杖で登る 2013年までは 易しい階段で足首固定器も必要 2014年は 片方を手すりにすれば足首固定器なしでも昇降できる 2015年は 難しい階段(半螺旋階段)に挑戦
 50歳台半ばといえば老化による体力の衰えが顕著になる時期ですが、その割にはきちんと回復が続いているのは嬉しいものです。

 さて11月はオランダのESTEC(欧州宇宙機構ESAの大きな施設)に行ってきました。その2週間前にパリでテロがあり、ESTECから汽車で2時間のブリュッセルでは出張直前の日曜が厳戒態勢にもなりましたが、前回(4月)に行った時と人通りもESTECのセキュリティーもあまり変化がなく、その点は助かりました。
 しかし、私がテロよりも恐れるトラブルに巻込まれました。それは、私の 歩行器 がアムステルダム空港(1泊予定のライデンから汽車で15分ほどの街)に届かなかったことです。
 私は歩行器がないと移動できません。その意味では車椅子使用者の車椅子と同じく、質が悪いミス(ストックホルム空港の問題)ということになります。不幸にして、一般人の間では
「車椅子は体の一部だが歩行器はなくてもどうにかなるもの」
という先入観が未だに蔓延していて(そういう「転ばぬ先の杖」的な使い方をしている人も現実に多い)、その弊害をもろに受けた形です。同じ理由で5年前は札幌ー福岡直行の小型飛行機(客室乗務員は1人しかいない飛行機では、自力で歩けない人は付き添いがいないと搭乗を認めないという規定が日航にはある)にゲート直前で搭乗を拒否されて、東京経由に振替えられた事もあります。
 この種の先入観によるミスは昔から気になっていて、それで中継地ではできるだけ歩行器を取り出して自力で次のゲートに行くようにしていたのですが、今回は接続時間が1時間だったので諦めていたところ、見事にストックホルムに置き去られてしまいました。
 ともかくも歩行器は届きません。1時間以上、空港の身障者付き添い(車椅子を押してくれる人)と荷物を探しまわった挙げ句、結局「不着」届けを出して、代わりの歩行器/車椅子を貸してくれるように頼んだのですが、もちろん使いやすいものがあるはずもなく、唯一あった歩行器が、 純粋に室内専用のアルミラック で、これは後輪が存在せず、絨毯のようにスライドできる床以外では、後脚を持ち上げないと前に進めない代物です。しかも、室内用なので100mも歩くと後脚のプラスチックが外れて、アルミで直で立つ形になってしまいました。
 要するに、進めない、不安定、座る場所はおろか、小さな荷物をおく場所もない、という、不便な代物です。例えば夜中のトイレの際は尿袋は前の置いてベッドかた移動しましが、それすらできません。運の悪いことに、尿袋が破れるというトラブルまで今回は経験しています。
 そういう酷い状況にもかかわらず、汽車で移動して、ホテルに泊まり、バスで移動し、翌日は身障者用のトイレのない建物で、説明会と詳細な会議に参加してきました。結局歩行器を手に入れたのは、アムステルダム空港でのチェックインの1時間前です(ストックホルムーアムステルダム便は少ない)。
 不幸中の幸いは、荷物が少ないことを考えて、本来の歩行器の前に取り付ける籠を、今回初めて持ってこなかったことです。さもなくば介護が、自身の荷物と私の荷物と籠の3つを同時に運びつつ(しかも雨天!)、更にちょっとした坂(歩道から車道におリる坂とか)で歩行器が傾くのを防がなければならないところでした。あと、これが身障者の移動に易しい「平地オランダ」だったのも幸いでした。
 ともかくも、テロより怖い「歩行器不着」の一日を(歩行器旅行で初めて籠を利用しなかったという幸運があったにせよ)、身障者未対応の酷い建物で生き残って(まさにsurviveだと思う)、今後の旅行での「トラブル」に少しは自信がついております。
 二度と経験したくはありませんが、歩行器に対する世間の理解度を顧ると、今後も10年に1度は起こりそうです。そもそも、欧州宇宙機構の大きな会議室がある建物に身障者用トイレがないぐらいですから、世の中の身障者に対する認識はまだまだ甘く、ましてや、車椅子以外の補助具の重要さが自然に認識されるのは遠い先のように感じます。
 そんなわけで、今後の旅行の際は「テロリスクは高いけど身障者施設の確実は街」と「身障者対応は不安が残るけど、テロリスクの低い街」のうちテロリスクの高い前者を無条件に選びそうです。

 旅行と言えば、前回報告した名古屋空港での搭乗拒否ですが、フィンランド航空は非を認めて、使わなかった分のチケット代(往復の半分)を払い戻してきました。その誠意を評価して、今後もフィンランド航空は使用することにします。ちなみに私が緊急に払ったのは(新規航空券とホテル一泊)、払い戻し分の3倍ほどですが、今回の問題には難民到来という自然災害的な面に加え、スウェーデン移民庁やフィンランド移民庁のヘルシンキ空港支所などの連絡怠慢と、大使館から在留者に流す重要情報を郵送からメールに切り替えた際に、メール登録以前の世代を完全に無視してしまった外務省の怠慢などもあるので、全額補填をフィンランド航空に要求するのは酷でしょう。ちなみにフィンランド航空は払い戻しの代わりのオプションとして、額面60%増のクーポン(1年有効、譲渡可能)を提示したので、そちらにしております。
 ちなみに、足止めを食ったのは私だけでなく同僚の中国人もそうで(彼は3週間北京で待ったけど、実家だったお陰でホテル代はかかっていない)、他の大学の知り合いを通して大学関係者だけには伝わるように伝言していますが、どこまで情報が広がっているかが不明です。一方、コペンハーゲンのほうは大丈夫だったようで、アメリカに遊びに行っていたニュージーランド人同僚は無事に帰って来ましたが、これは航空会社がスカンジナビア航空(スウェーデンが25%出資している)為ではないかと思われます。あと、問題になった滞在許可カードは300km以上離れた街まで汽車で往復して手に入れております。

 最後に例によって無駄話です(というか近いうちにスウェーデンに来る人には必須情報ですが)。
 スウェーデンの紙幣が今年から来年にかけて全て更新されます。日本の新札発行との大きな違いは、発行9ヶ月後に 旧札が無効になる ことで、それを過ぎるとストックホルムの国立銀行(日銀みたいなもの)に行って、手数料を払って交換しなければなりません。
 使用期限は20、50、1000クローナが2016年6月30日(半年後)、100、500クローナが2017年6月30日です。現時点でスウェーデンの紙幣をお持ちの方は至急、スウェーデンに行く知り合いに草蛙代として渡すことをお薦めします。

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