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リハビリ記録その106

2011-9-4
山内正敏

 7月がマトモな夏だったせいか、秋も早く、しかも雨のやや多い8月となって、特に8月後半は長距離歩行があまり出来ませんでした。また、国連チェルノブイリ環境汚染報告書の翻訳で余暇が削られたというのも歩行量を削いだ理由に挙げられます。とはいえ、それでも良く歩いてはいます。

 先ず歩行器ですが、研究所からアパートまでの8.4kmで追い風ながらも1時間27分で歩いてしまって、今夏の目標を完全にクリアーしてしまった他、400mトラック17周でも、先月のタイムを更に1分縮めて61分丁度で歩いています(昨年と同じタイムで1周余分に歩いている)。時速6.7kmに相当するわけで、十分の成果です。ちなみに始めの800mは7分で、やっと水泳の世界記録よりも速く歩く事が出来るようになりました(水泳ってそれほど速いものです)。松葉杖も2キロ半近い坂道コースを75分(時速2キロ)で歩いていて、十分に満足出来る結果です。ちなみに松葉杖では急な(10%以上の)下り坂も挑戦しましたが、こちらは登りと違って3点確保で降りないと怖いという状況は変わりません。
 さて、これだけ訓練すると、怖いのは故障と転倒です。故障の方は、今は足ではなく肩が問題で、実は2週間程前から左肩の筋肉(胸筋)に痛みがあります。使い過ぎが原因で、要するに、あまり歩行器に乗りかかるような歩き方をしてはいけないと言う事です。そこで今は歩行ペースを落としています(といっても2年前のベストより速い)。そのお陰で今週末は少し調子を戻していますが、無理しない程度の練習で抑えています。
 一方、転倒の危険は松葉杖に常にあり、そこで出来るだけ安全なコースを歩いていますが、それでもどうにもならないものに横断歩道の白い塗装があります。というのもザラザラのアスファルトの上に、いきなりツルツルの白線が道路を横断しており、そのため、松葉杖の先端が滑り易いからです(松葉杖で横断歩道を渡る時は、けっして横断歩道の白線の中を歩いてはいけない)。同様の問題は点字ブロックの黄色いマークや、歩道タイルでもあり、これら国際規格の『障害物』はどうにもなりません。それでもキルナは田舎町だからマシで、これが都会や日本だと、路面がザラザラのアスファルトとツルツルの歩道が混ざり過ぎで、松葉杖には怖すぎます。つるつるの路面は困るというのが正直な気分ですが、まあ、これは私みたいに妙に長い距離を訓練する者の贅沢なのかもしれません。ただ、横断歩道の色塗装の国際規格は、白線を渡らずにすむレーンを真ん中につけるとか考えて欲しい気はします。
 さて、回復は足だけではなく、手指もゆっくりながら回復しており、この夏は、てこの原理を応用して、ナイフで缶ビールを開ける事に成功しました。なぜこんな事になったのかというと、7月が非常に暖かくて、キルナの夏としては初めて『ビールが飲みたい』蒸し暑さになったためです。午前の訓練と昼食を終えた後、4〜5時間は介護が昼休みでいませんから、その間にビールが飲みたくなったら、自分で開けるしかありません。どうやら、欲望・煩悩は強い方がリハビリには効果的なようです。ちなみにビールのおつまみに、2年程前に挑戦した落花生(リハビリ記録84)を試したら、前回みたいに10粒でギブアップなどという事はなく、1週間がかりではあるものの一袋を全部割ってしまいました(前回は袋の3分の2を結局介護に割ってもらった)。あと、殻付き海老も500gを一気に食べるような真似をやっております。
 夏が蒸し暑かった効用のもう一つに、手足の指があまり乾燥せずに荒れなかったというのもあります。病気以来、神経が指先に届かない為、指の先端が常にしわしわの荒れた状態だったですが、7月から8月前半に掛けてだけはそれがありませんでした。今は乾燥感が戻っていますが、それでも5年前に比べると先端がややふっくらしています。そんな訳で、指は確かに回復しています。

 最後に例によって無駄話です(いや、無駄話じゃないか)。
 2ヶ月前にお知らせした国連チェルノブイリ・フォーラムの環境汚染報告書の翻訳ですが、既に直訳+意訳が終わったものの(意訳が終わったのは1週間前です)、IAEAが民間による翻訳申請を(外務省を通してすら)受け付けない事が判明し、現在、翻訳申請ができるような政府組織と相談しているところで、しばらく時間がかかりそうです。ボランティアが認められない以上、原子安全委員会が5年前に翻訳しておかなければならなかった書類だったということですが(そもそも税金でつくった報告書の翻訳が公開出来ない事自体がおかしい)、今はそんな責任追究よりも、翻訳を必要な人に届ける事が最重要課題ですから、そのあたりをIAEAの人と相談した所、仮訳を『個人的』に配布するOKだそうなので、知り合いとかに直接配布して下さる方がおられましたらご連絡下さい。訳文をお送りします。7月のセシウム牛騒ぎも8月の大文字焼騒ぎも、国会での除染問題騒ぎも、この翻訳が5年前から存在していたら回避出来ていた筈です。

1章:2〜7章の要約 (英文15ページ)
2章:序言 (英文2ページ)
3章:汚染状況 (英文45ページ
  3.1 爆発から初期分布まで
  3.2 都市での汚染
  3.3 農地での汚染(農産物を含む)
  3.4 森林での汚染
  3.5 水圏での汚染
  3.6 まとめ
  3.7 課題
4章:環境汚染への対策 (英文28ページ)
  4.1 放射能に関する安全基準
  4.2 都市での放射能除去
  4.3 農地での対策(農産物を含む)
  4.4 森林での対策
  4.5 水圏での対策(水産物を含む)
  4.6 結論
5章:健康被害 (英文22ページ)
6章:動植物への影響 (英文14ページ)
7章:チェルノブイリ防護ドーム(石棺)の更新の際の放射線対策 (英文23ページ)

 さて、こんどこそ無駄話です。
 現在、鉱山が地下坑道を更に深く掘るべく、その崩壊角度範囲(陥没が起こった際に影響の及ぶ範囲)から鉄道だの建物だの湖だの取り除く作業が始まっていますが、そのうちの湖について、8月の頭に作業が始まったとおもったら、早くも湖を仕切る(水を抜く部分と残す部分に分ける)作業が終わってしまいした。今回新しい仕切ったところの水を抜くと、キルナ市の目の前の大きな湖は元のサイズから半減してしまう事になります。仕切りは今回が2回目で、一回目はかなり昔でした。その時は水を抜くのが目的ではなく、鉄道から鉱山への引き込み線を作るのが目的だったようです。なので1990年に私がこちらに来た時は、仕切られたところも水をたたえていましたが、鉱山の拡張に伴って今から15年前に水が抜かれております。ちなみに水抜きは安全上仕方ない事で、実際、以前水を抜いた跡の跡地は、2年半前に大陥没を起こし、水を抜いていなかったら大惨事になるところでした。そのとき、鉱山へのメイン道路も陥没してしまって、今のアクセス道路はやや迂回しています。将来的には、今までよりも10キロ近く迂回しなければならなくなる模様です。
 無くなるのは湖(の一部)だけではありません。キルナ駅と鉄道が半年後に完全に移転する他、アパート群の一部の取り壊しが間もなく始まり、実はキルナに住む日本人の一人も、それで追い出されて、キルナの郊外に引っ越すそうです。取り壊されるところは私のアパートから直線で500mの距離で、私のアパートも20年後ぐらいに取り壊される見込み(世界の鉄鉱石需要次第)です。

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