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リハビリ記録その45

2006-8-06
山内正敏

 7月としては珍しく雨が少なかったお陰で、曲がりなりにも使えるようになった膝バンドを外で駆使しております。

 膝バンドの恩恵を一番受けているのは松葉杖訓練で、週に2度ほど普通の低い松葉杖で1時間〜2時間歩いています。歩ける限界が2時間に延びたお陰で、最長で平地3キロ、坂道2キロ半ほど歩けるようになりました。今夏の目標が2キロだったので、簡単にクリアーです。歩くフォームにも進展があり、大抵の道で松葉杖を交互にしか使わないばかりか、その交互杖でも、昨年までと違って、一瞬(それこそ0.1秒ほど)両方の杖と片足とが宙に浮くという、普通の歩行に近い状態で、松葉杖は左右のバランスを取るためだけに使っているようなものです。バランスの向上は平行棒訓練でも現れていて、手放しで1歩半進むというのがかなり頻繁に出来るようになっています。
 バランスの向上に一番寄与していると思われるのは朝の床運動で、特に膝立ちの状態で身体を左右に捻る運動が効いているのではないかと思います。そんな訳で、毎朝の床運動は更に充実させて、今では35〜40分ほどかけいます。基礎訓練というのは思いのほか役立つようです。
 普通の低い歩行器で距離とスピードを稼ぐ訓練では、研究所とアパートとの間の片道(7.9km)を既に3度も歩いで今夏の目標を達成しています。研究所からアパートまではだらだらと長い登り(トータルで約120mの差)で、登りの方が膝に負担が来ない事から、始めの2回は登り(帰り)で、3回目に下り(行き)に挑戦しました。1回目は全力で歩いて望外にも2時間を切りましだが(1時間57分)、筋肉痛が2日程残ってしまったので、2回目はゆっくりと2時間半かけたら、疲労が残っただけで筋肉痛にはならず、翌日には松葉杖で2時間歩けた程なので、この、ややゆっくりペースが丁度良いのかも知れませんが、念のため、3回目の下りをそれこそ全力で歩いたところ、たった1時間44分しかかからなかった(時速 4.5kmペース)にも関わらず、筋肉痛にはならかったので、これは慣れのお陰でしょう。ここまで速く歩くと汗を思い切りかいて爽快な気分になるので、夏のうちに(歩くのが好きな介護の担当の時に)時々やるつもりです。
 一方、肘で支える歩行器で、膝バンド無しで歩く訓練も相変わらず続けていて、最長は5キロの2時間40分です(この時はさすがにくたくたになった)。この訓練は半ズボンが使えるので日光浴に便利ですが、反面、腕の自由がほとんど無いため、虫の多い季節には向きません。蚊だけなら昼間歩けば避けられるものの、ラップランドにはクヌットという昼夜構わず出て来るたちの悪い虫がいて、例年なら8月にならないと発生しないのに今年は7月から出始めて、10日ほど前からは大発生と言っても良いぐらい現れて、おちおち歩いてられず、ここ2週間ほどは余り長い距離を歩いていません。それで、代わりに、膝バンドのみならず足首固定器すら使わずに歩く練習(当然距離も時間も短い)を初めています。現在の最長は400mですが、平地なら(そして虫がいなければ)1キロぐらいまでは可能ではないかと思います。
 膝バンドと足首固定器を使わない足の訓練には、他に自転車があります。室内用自転車では既に始めていましたが、3輪自転車では1ヶ月程前に始めたばかりで(前回報告した通り)、この1ヶ月うちに、足首固定器付きで出した記録を更新して、坂ばかりの往復コース2キロで、今まで登りの一番きつい所を迂回していたのは直登した上に、それを5往復(今までは4往復が最長)して、そのタイムが1時間13分です。平地や下りですら2速で走る徐行ライドにもかかわらず一周当たりの時間が更新している訳ですから、登りが速くなった事を意味します。但し、病院のリハビリ室で脚力トレーニングをすると、最大脚力はこの2ヶ月程完全に停滞していて、タイム更新の理由は瞬発力より持久力が上がっている為だと思われます。
 こうして見ると、持久力の回復が著しく、瞬発力は完全に身障者なのに、持久力だけは普通の人並みにあります。これはギランバレーのガイド書などに書いてある事と全然違います。もちろん、ガイド書は私のような重症/長期リハビリの人間の情報が足りないままに書かれているきらいもありますから、もともと全部を鵜呑み出来ない訳ですが、こうも対照的なリハビリ経過(スタミナ以外に色々ある)を体験すると、ギランバレーはやはり症候群(病気と言う狭い範疇でない)と実感します。

 生活の方では、結局、まる1ヶ月、夜間用の尿袋を接続せずに寝ました。普段の尿袋を空ける為にトイレに行く手間が大変なので、平均睡眠時間が30分程のびて、かつ何となく睡眠不足気味ですが、それでも、昼間の活動に悪影響を及ぼす事はほぼ無くなりました。もっとも、これは研究所に行く用事がない(会議が無いし学生もいないので仕事は全部自宅で出来る)という面が大きく、普通の生活が再開したらどうなるか分かりません。トイレといえば、大便の後に尻を拭うのもかなりの頻度で出来るようになりました。変な体勢に身体をひねる必要があるので、背骨に取っては悪い事だと思いつつも、指の訓練の積もりで回数を増やしています。回数が増えたのは、夏の臨時に尻をマトモに拭えないのが来たためで(キルナのバスの時刻表すら読めないような子で、市の介護課は、一番出来の悪い臨時を私の所にあてているのではないかと思ってしまう)、否応無しに身体をひねっている訳ですが、背骨が変形しない事を祈っています。
 仕事の方は論文の改訂が忙しく、とにかく編集者は、こっちが1日最大6時間しか働けない事を知らずに期限を設定するので(1日10時間労働を前提にしているフシがある)なかなか期限内に仕上がりません。まあ、この身体で同時に複数改訂している所にも問題がありますが。それでもヤマを超えたので、今はややのんびりしています。

 最後に軽い話を2つほど。小さな危機を大げさに強調して、現実に起こっている戦争や内戦や虐殺から世界の目を背けさせようとする連中が安保理を牛耳る鬱陶しい季節には、こんなものが相応しいんじゃ無いだろうかと思いまして、 風刺フィクションサイエンス・フィクション を書きました。暇を持て余している方はどうぞ。
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